やはり、ナイトオブワン経由だとチェックが甘くなるなとルルーシュはほくそ笑んだ。大したものを買ったわけではないが、試しにいくつか似たものをスザク経由で買っみたが、ヴァルトシュタインのものは品物を入れたダンボールだけ開けて商品の箱は未開封なのに対し、スザクのものは商品の箱もすべて開けられ、機械類に関しては分解までされていた。いや、これは分解ではなく、壊したという方が正解か。ジュリアス宛でも同じ。形式上検査方法は同じだが、ナイトオブワンとイレブンの成り上がり、そして正体不明の軍師となれば扱いも変わるのか、あるいは何者かの指示か。
なんにせよわかりやすくていい。
白か黒。
0か100。
そこに変化が起きれば、敵が動いたということだ。
「まあ、上出来か」
昨日の夜注文し、翌日の昼には頼んだものが全て届いた。
検閲にどれだけ時間がかかるのかもわかった。
僅かな時間で得られた情報は多い。
「上出来?何処がだよ」
開けられた箱の中身を見ていたスザクは、不愉快そうに言った。
片手のルルーシュでは開封作業もままならないからと自主的に手伝いを申し出たまではいいが、買った私服など、縫い目が解かれたり切断されていたりと散々な目にあっていた。今までこんなことなかったのにと心底ご立腹だ。
今までやられなかったということは、ジュリアスに対する嫌がらせがスザクにまで及んだということか。イレブンに対して、という部分は削除する。
これで敵の部下が検品している者の中にいる事も確定した。
怒りを露わにしたスザクが勢い良く立ち上がったので「どうしたんだ?」と尋ねれば、「こんなことをしていいはずがない」と、いい出した。抗議に行くつもりなのだろう。
「いいんだ。これでいい」
「どこがだ!」
「あからさまな方がわかりやすいだろう?これで注意などしてみろ。隠れて毒を仕掛けられても気づけなくなる。このままでいい。欲しいものはナイトオブワン経由で買い、敵の目はこうしてこちらで惹きつける。それだけで俺の身は安泰だ」
「だけど!」
「スザク、お前の買い物はキャメロットの上司に頼んで受け取ってもらえ。そうすれば確実に安全な品が手に届く。ダミーの品を定期的に通販しておけば、犯人は嫌がらせが出来ていると思っているから満足する」
「でも、せっかく買ったものが無駄になる」
「いいかスザク、こう考えろ。金で、安全を買っているんだ」
スザクは正義感が強い。だから納得出来ないのだろう。作った人の気持ちはどうなる。とか言い出す可能性もあったが、その視線がルルーシュの左腕と左目を辿ったあと、悔しそうに口元を歪めソファーに腰を下ろした。
これを平気でやる人間が敵なのだから、毒や爆薬を仕込む可能性は大きい。
「・・・無駄死には、許さない。お前の罪はそんなことでは消えない」
「そう思うなら、余計なことはするな。届く荷物は、これでいい。・・・・いや、後々苦情はいれるか。何も言わないのは不自然だからな」
軽く苦情を。
そうすれば、おそらく服を切り刻んだりはしなくなる。目に見えるような形では。機械類などは、一度出して壊してから再び詰め直すようになるだろう。だが、それでいい。嫌がらせは続行させる。そうなるように仕向ける。だがそれは今日ではない。
「よし、使えないものはゴミとして出すか」
両腕が無事だったなら、毒や爆弾があるか調べたあと部品を取り出して色々作りたかったが、片手では無理だ。そう、この手では必要な道具を作り出すことさえ出来ない。忌々しい話だ。
こちらの内部事情を外部に知られるわけにいかないため、侍女にやらせるわけにもいかないのが面倒な点だ。皇帝の騎士が嫌がらせを受けているなど、噂話になっても困る。
「・・・って!待てスザク!!!」
そういうことは一切考えないスザクが、箱を適当に積み上げ、それらを全て持ち上げたかと思うと部屋の外に出ようとした。
「なに?まだあった?」
「そうじゃない!それを持って戻ってこい!」
「え?ゴミの処分は部下に・・・」
「馬鹿かお前!こんなもの外に持っていけば、俺達が嫌がらせ受けてますと公言するようなものだろ!どう始末するかはビスマルクと相談するから部屋の隅におけ!」
「嫌がらせ受けてるのは事実だろ」
「それを表立って噂されれば、今仕掛けてきている敵以外の連中も刺激され、嫌がらせが増える可能性が高い!」
「そんなことないだろ」
「ここはそういう場所で、俺はそういう立場なんだ!」
簡単に死なれては困るんだろ?なら理解しろ!と言っても、スザクは
理解できないのかしたくないのか、不愉快そうに眉を寄せたあと、とりあえず言うことを聞きガラクタと化した荷物を部屋の隅においた。